近年、ペーパーレス化が浸透しつつあり、不動産業界においても電子化に向けた意識が高まっています。
とくに、賃貸借契約を電子化することにより、手間や費用が削減できるなどさまざまなメリットがあるのです。
そこで今回は、賃貸借契約における電子契約とは何かについてご説明したうえで、メリットとデメリットについても解説します。
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電子契約とは、スマートフォンやパソコン、タブレットなどの電子機器を用いて、オンライン上で電子署名をし契約をおこなう方法のことです。
署名した電子データには、印鑑証明書の代わりとなる電子証明書や契約締結日時の証明、それ以降文書が改ざんされていないことを証明する「タイムスタンプ」が刻印されます。
そして、電子署名やタイムスタンプが刻印された電子データは、企業内のサーバーやオンラインストレージにて保管されています。
社会実験
2017年に賃貸借契約の「重要事項説明の対面原則」による規制緩和が本格的に始まりました。
それをきっかけに、2019年10月1日より国土交通省は賃貸取引における重要事項説明書などを電子書面にて交付する実験をおこないました。
これにより、どのくらい影響が出るのかを調べた結果、電子署名や専門業者によるサービスが必要であることが分かりました。
オンライン上での取引となるため、電子書類を交付する際はセキュリティ面が懸念されるでしょう。
そこで、書類には高度なセキュリティが確立された電子署名が必要となるのです。
また、電子署名に改ざんがされていないかを確認するための業者も存在します。
完全電子化への流れ
2015年8月〜2017年7月1日までの長期間、賃貸取引における重要事項説明などの電磁的方法による交付にかかる社会実験がおこなわれていました。
この実験期間で、取引があったのは25,607件であるにも関わらず、実際にトラブルが発生したという報告は受けていません。
賃貸借契約の完全電子化を目指す背景には、2015年からおこなっていた実験のトラブル件数がゼロという点も影響しているといえるでしょう。
また、重要事項説明の対面原則の規制緩和からIT重説も開始されました。
IT重説とは、インターネットと賃貸物件契約時に必要な重要事項説明を合わせたものです。
オンライン環境が整っていればどこでも実施可能であるため、入居予定者が来店する必要もなく、契約における手続きの負担を軽減することができます。
一方、従来は宅地建物取引士が入居予定者に対面で重要事項説明をおこなうことが義務付けられていました。
しかし、2013年に政府がIT化を進めるために「世界最先端IT国家創造宣言」を出したことから、不動産業界でも非対面で重要事項説明をおこなうなどのIT化が開始されます。
そして、2015年8月から約1年半にわたって、国土交通省主導のもと社会実験が実施されました。
この社会実験を経て、2017年10月からIT重説は本格的に運用されることとなったのです。
なお、IT重説は現在、賃貸取引のみに限定されているため、売買取引などに関しては従来通りの対面説明が義務付けられているため注意が必要です。
賃貸借契約における電子契約のメリットとは
ここでは、電子契約をおこなう3つのメリットについてご紹介します。
時間や費用が削減できる
家の近くに不動産会社がある場合は、気軽に通うことができますが、地方に住んでいて東京の物件を探すといった場合、遠距離になるほど移動時間や費用の負担も大きくなります。
また、何度も足を運ぶとなると、当然その分の時間と費用が発生します。
一方、内見や重要事項説明、契約をオンライン上でおこなうと、移動回数を減らすことができるため、負担も軽減されるでしょう。
現在、オンライン内見やIT重説での実施数は増加しています。
したがって、契約のためだけに訪問するというのも非効率であるため、契約もオンライン上でおこなうというのが自然な流れです。
実際、物件に訪れることなくオンラインでの内見だけで物件を決めて、お会いすることなく契約するという方も少なくありません。
電子契約解禁により、すべてのやり取りをオンライン上で完結することができれば、時間や費用が省けるため、大きなメリットとなるでしょう。
日程調整がしやすい
対面で契約する場合は、契約日の日程調整が必要となります。
とくに、遠方にお住まいの場合は移動時間がかかるうえ、お互いのスケジュールを合わせなければなりません。
一方、電子契約の場合はわざわざ出向く必要がなく、お互いが空いている時間にできるため、比較的スケジュール調整がしやすいというメリットがあります。
これによって、お部屋探しにおけるストレスが解消されるでしょう。
手間がかからない
紙の契約書では、書類の記入や捺印、郵送などの手間がかかるのに対し、電子契約ではこれらの手間を大幅に削減することが可能です。
引っ越し準備で忙しい中、書類管理から解放される点は大きなメリットといえるでしょう。
また、印鑑がなくてもデバイスがあれば対応できるため、場所に縛られずに対応ができる点も魅力のひとつです。
賃貸借契約における電子契約のデメリットとは
上記では、魅力的なメリットについてご紹介しましたが、気を付けていただきたい点も存在します。
ここでは、電子契約をおこなう3つのデメリットについてご紹介します。
全体像を把握しにくい
紙での契約書と比較すると、内容の全体像が把握しにくいという点がデメリットとして挙げられます。
情報が一覧できないという点は、紙の本と電子書籍を比較した際もよく言われる欠点のひとつです。
しかし、PDFファイルであるため、適切なPDFリーダーを使い見開き表示を活用することによって、ある程度克服することもできるでしょう。
インターネット環境が必要
電子契約の場合は、IT重説が必須となるため、オンライン上での重要事項説明をおこなわなければなりません。
インターネット上の回線や映像、音声などが安定していない環境ではIT重説に必要な条件を満たすことができないため、インターネット環境が整っていることが必須となります。
インターネットに不慣れな場合
電子化ならではの課題として、高齢者を中心に操作にインターネットに不慣れな方も多いのが現状です。
そういった方にとっては、契約書を紙と同様に扱えないことにストレスを感じるかもしれません。
以前、ガラパゴス携帯からスマートフォンへの移行期にも、高齢者には扱いが難しいと懸念されていました。
しかし、現在では技術が発展したことにより、むしろスマートフォンのほうが便利という声もあるほどです。
それと同様に、文書が電子化するにつれて電子契約ツールや電子端末の操作方法が洗練されることで、現時点で感じているデメリットが解消される可能性もあるでしょう。
また、賃貸物件のオーナーにもオンラインが苦手という方もいます。
電子契約より書面契約を希望する場合は、従来とおりの契約方法でおこなうこともあるでしょう。
あくまでも、電子化することも可能であるというだけであって、すべての契約でオンライン化されるわけではありません。
そのため、契約を締結する当事者間で書面契約を希望する場合は、書面での契約をおこなうことが可能です。
まとめ
電子契約とは、スマートフォンやパソコンなどの電子機器を用いて、オンライン上で契約をおこなうことをいいます。
時間や費用が削減できるうえ、日程調整がしやすく手間がかからない点がメリットです。
一方、全体像が把握しにくく、インターネット環境が必要であるうえ不慣れな方にはデメリットに感じるかもしれません。
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